民間教育研究団体TOSS 代表の谷和樹さんが登場
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- 2025/06/15
民間教育研究団体TOSS代表の谷和樹さんをお迎えして

小山「玉川大学教職大学院ってはじめて聞いたのですが、玉川大学の中にあるんですか?」
谷「教職大学院という制度は全国的にあって、全都道府県に必ず教職大学院がございます。これはいわゆる専門職大学院で、現職の先生方のキャリアアップをねらう、もう一度学び直してもらうということを目的に作られました。実際にはストレートマスターの学生なんかも来て、先生を目指して勉強していると。そこで教えています」
宇賀「TOSSというのはどういう意味なんですか?」
谷「Teachers' Organization of Skill Sharingの略でして。先生方ができるだけ子どもたちにとって価値ある教師になりたいという願いのもと、技術技能をみんなで共有化して、お互いに学び合っていこうと。とりわけTOSSでは、非常にお勉強が苦手だとか、難しい環境にいるとか、そういった子どもたちも含めてどの子も大切にされなければならない、一人の例外もなく、ということを合言葉に全国の皆さんと勉強を続けているところです」
小山「すごい大切なことですね」
宇賀「そうですね。谷先生も、もともとどちらかで教師をされていたんですか?」
谷「私も兵庫県で22年間小学校の教員をしていました。担任の先生を22年間続けていて、そのあと今の玉川大学の教職大学院に来たということですね」
宇賀「小学校の先生って大変ですよね」
谷「楽しかったですね、本当のような毎日でした。とりわけ後半の10年くらいですね、この仕事がわかるようになってからは本当に楽しかったですね。もちろん大変なこともたくさんありますけども」
小山「TOSSでは具体的に、先生たちに『これとこれとこれはやりましょう』みたいなものは作っているんですか?」
谷「規約みたいなものはないのですが、基本的に僕たちの考え方というのは、教育技術というのはいろいろあるべきだ。教師が主体的に取捨選択するべきだ。そして日々変化していく、進化していくはずのものであって、一定ではないはずだと。そしてその教育技術というのは、そもそも子どもたちの役に立つものでならないということを大切にしようね、ということは、若い先生方向けに共有していますね」
小山「共有というのは何か授業をやるんですか? それともネット上で講義をやったりするんですか?」
谷「第一に全国700あるサークルで先生方が集まって、今みたいな話を週に1回、月に1回なさっているわけですね。2つ目は、ウェブ上ではTOSSランドという教育方法の共有サイトを作っていまして。それからTOSS SNSというプライベートSNS等々ですね。3つ目に大事なのはセミナー。教師の春フェスと呼んでいる地元セミナーみたいなものをやっています。ご当地セミナーみたいな形ですね。それから企業とタイアップしたセミナー。日本郵便さんとか経済広報センターさんだったり様々な企業とタイアップをして、いろいろな教材を開発して先生方とその教え方について講義していくと」
小山「それで手紙の書き方を一つの教材にされていると」
宇賀「どんなことを教えていらっしゃるんですか?」
谷「手紙の書き方という点では、テキストを開発するということをメインにセミナー展開していまして。薄い子どもたちがすぐに取り組めそうなテキストを作っています」
宇賀「1・2年生用、3・4年生用とあるんですね」
谷「5・6年生用、中学生用、高校もあります。これを全国各地でオンラインセミナーやハイブリットセミナー、リアル対面セミナーを実施して、先生方と使い方、教え方、あるいは手紙を書くことの大切さについて子どもたちに教えていこうねということをしています」
宇賀「招待状の書き方、お礼状の書き方とかいろいろありますよ。封筒の宛名の書き方、はがきの宛名の書き方。今、まだやったことがない子たちがたくさんいるんですかね」
谷「今はメールで全部済む時代ですから。相手の住所を書くとか、自分の住所を教えるとか、そういう概念がなくなりつつありまして。子どもたちが自分の家なのに、郵便番号や住所がわからないということが非常に増えています。学習指導要領という国が定めている国の基準がありますけど、学習指導要領には手紙の書き方を教える項目はあるのですが、郵便という文字と、住所という文字が学習指導要領に入っていない。これをもし入れていただくことができれば、もう少し学校の先生方も意識して、せめて自分の家の郵便番号や住所は言えるといいね、と。これは地域的な感覚を育てるのにも非常に大事だと思いますし、災害の時に『今どこにいますか?』と言われた時に、自分の住所が言えないということになると、救助に向かう人たちが遅れる可能性すらあって。そういった安全の面でもやっぱり自分の自宅の郵便番号と住所は言えてほしいかなと思うわけですね」
小山「そう言われるとハッとさせられますね」
宇賀「こうやって手紙の書き方を学ぶことで、子どもたちにどのような影響があると思いますか?」
谷「地域への帰属意識を高めるということはもちろんありますが、何よりも、手紙が持っているメールとかそういうものにはない、あたたかい感じ。人と人とがもっと繋がるような感じですね。私たちの授業を受けた小学生・中学生たちにアンケートを取ってみると、中学生の女の子で、『メールや電話ではなく手紙でしか伝えられない内容があると思う』と考える子が半数近くはいるんですね。本人はあまり書かないわけですが、それは思う、という。僕もその関連でラブレターの授業をしたり。ラブレターはメールじゃない方がいいですよね?」
宇賀「伝わり方が変わると思います」
小山「そうですね。それこそスタンプで送っても伝わらないですよね。スタンプで断る人はいそうですけどね」
谷「おっしゃる通りですね。できるだけ実体のある手紙が持っている価値が子どもたちに伝わるといいなと思って。10年くらい前から毎年そういった授業提案をしてきています」
宇賀「今年度から先生になった方たちも全国にたくさんいらっしゃると思うんですけど、何かメッセージやアドバイスがあるとしたら」
谷「今年先生になったばかりの若い先生方ですよね。今、そういう先生方が結構な確率ですぐにお辞めになってしまうんですよ。ただ、やっぱりそういった新しく小学校、中学校、高校の現場に来られた方にお話ししたいのは、先生というのは本当に素敵な仕事だということ。今申し上げたように一生懸命やればやるほど、5年、または10年くらい一生懸命やってから後が本当に楽しくなってくるので。楽しさが本当にわかるようになるまでにはちょっぴり時間がかかるよ、と。今ちょっと大変だと思うけど諦めないで、せっかく就いた素晴らしい仕事を努力して続けてほしいなと。もし本当につらくなったら僕たちTOSSのサークルが近くにありますから。ぜひ来ていただいて、苦しいですと言ってくれれば悩みを共有していける仲間がいますので頑張ってほしいなと思います」
小山「いいですね、TOSSがあると安心しますね。なかなか相談しにくいでしょうからね、先生は。同じ仲間がいるといいですよね」
宇賀「この番組はお手紙をテーマにお送りしているのですが、谷さんにとって手紙が書きたくなる場所は?」
谷「普通、メールとか仕事上のやり取りはほとんど自宅や移動中の隙間時間が多いんですけど、改めてお手紙を書きたくなるのは飛行機の機内ですかね。それか飛行場のロビー。実際に年賀状とかお礼状とかかなりの確率でそこで書きますね。年賀状は飛行場で書いて、搭乗前に投函してやっと安心して出かけて行くとか。そういうのは割と多いですね」
宇賀「今日は谷さんに、『今、想いを伝えたい方』に宛てたお手紙を書いてきていただいたのですが、どなたに宛てたお手紙ですか?」
谷「今日は全国の小学生の皆さんに書きました」
谷さんから、小学生の皆さんへ宛てたお手紙の朗読は、ぜひradikoでお聞きください(*6月22日まで聴取可能)。
宇賀「最後に、これからの時代に必要な子どもたちの力ってなんだと思いますか?」
谷「問いを作る力でしょうね。今、生成AIが何かを教えてくれたり、ネット検索でいろいろな情報をすぐに取り出したりすることができるため、先生の役割も違ってくるのではないかと言われていますが、そういった中でも一貫して需要なのは、生成AIにどんな問いを出せばいいのか、何か情報を見た時にどんなことに引っ掛かることができるのかということですね。子どもがちょっとだけ問いを出した、ちょっとだけ面白い発言をしたというところに先生も引っ掛かってくれて、その発言を見取ってくれて、引っ張っていってくれる。そういうような授業が今後もっともっと求められてくるんだろうなと思いますね」
宇賀「今日の放送を聞いて、谷さんにお手紙を書きたい、と思ってくださった方は、ぜひ番組にお寄せください。責任をもってご本人にお渡しします。
【〒102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST 谷和樹さん宛】にお願いします。応募期間は1ヶ月とさせていただきます」
谷和樹さん オフィシャルウェブサイト
TOSS 公式ウェブサイト
谷和樹さん、ありがとうございました!
今回の放送は、radiko タイムフリーでもお楽しみいただけます。
「SUNDAY’S POST」Xのアカウントはこちらから。
谷「教職大学院という制度は全国的にあって、全都道府県に必ず教職大学院がございます。これはいわゆる専門職大学院で、現職の先生方のキャリアアップをねらう、もう一度学び直してもらうということを目的に作られました。実際にはストレートマスターの学生なんかも来て、先生を目指して勉強していると。そこで教えています」


谷「Teachers' Organization of Skill Sharingの略でして。先生方ができるだけ子どもたちにとって価値ある教師になりたいという願いのもと、技術技能をみんなで共有化して、お互いに学び合っていこうと。とりわけTOSSでは、非常にお勉強が苦手だとか、難しい環境にいるとか、そういった子どもたちも含めてどの子も大切にされなければならない、一人の例外もなく、ということを合言葉に全国の皆さんと勉強を続けているところです」
小山「すごい大切なことですね」
宇賀「そうですね。谷先生も、もともとどちらかで教師をされていたんですか?」
谷「私も兵庫県で22年間小学校の教員をしていました。担任の先生を22年間続けていて、そのあと今の玉川大学の教職大学院に来たということですね」
宇賀「小学校の先生って大変ですよね」
谷「楽しかったですね、本当のような毎日でした。とりわけ後半の10年くらいですね、この仕事がわかるようになってからは本当に楽しかったですね。もちろん大変なこともたくさんありますけども」
小山「TOSSでは具体的に、先生たちに『これとこれとこれはやりましょう』みたいなものは作っているんですか?」

小山「共有というのは何か授業をやるんですか? それともネット上で講義をやったりするんですか?」
谷「第一に全国700あるサークルで先生方が集まって、今みたいな話を週に1回、月に1回なさっているわけですね。2つ目は、ウェブ上ではTOSSランドという教育方法の共有サイトを作っていまして。それからTOSS SNSというプライベートSNS等々ですね。3つ目に大事なのはセミナー。教師の春フェスと呼んでいる地元セミナーみたいなものをやっています。ご当地セミナーみたいな形ですね。それから企業とタイアップしたセミナー。日本郵便さんとか経済広報センターさんだったり様々な企業とタイアップをして、いろいろな教材を開発して先生方とその教え方について講義していくと」
小山「それで手紙の書き方を一つの教材にされていると」

谷「手紙の書き方という点では、テキストを開発するということをメインにセミナー展開していまして。薄い子どもたちがすぐに取り組めそうなテキストを作っています」

谷「5・6年生用、中学生用、高校もあります。これを全国各地でオンラインセミナーやハイブリットセミナー、リアル対面セミナーを実施して、先生方と使い方、教え方、あるいは手紙を書くことの大切さについて子どもたちに教えていこうねということをしています」

谷「今はメールで全部済む時代ですから。相手の住所を書くとか、自分の住所を教えるとか、そういう概念がなくなりつつありまして。子どもたちが自分の家なのに、郵便番号や住所がわからないということが非常に増えています。学習指導要領という国が定めている国の基準がありますけど、学習指導要領には手紙の書き方を教える項目はあるのですが、郵便という文字と、住所という文字が学習指導要領に入っていない。これをもし入れていただくことができれば、もう少し学校の先生方も意識して、せめて自分の家の郵便番号や住所は言えるといいね、と。これは地域的な感覚を育てるのにも非常に大事だと思いますし、災害の時に『今どこにいますか?』と言われた時に、自分の住所が言えないということになると、救助に向かう人たちが遅れる可能性すらあって。そういった安全の面でもやっぱり自分の自宅の郵便番号と住所は言えてほしいかなと思うわけですね」
小山「そう言われるとハッとさせられますね」
宇賀「こうやって手紙の書き方を学ぶことで、子どもたちにどのような影響があると思いますか?」

宇賀「伝わり方が変わると思います」
小山「そうですね。それこそスタンプで送っても伝わらないですよね。スタンプで断る人はいそうですけどね」
谷「おっしゃる通りですね。できるだけ実体のある手紙が持っている価値が子どもたちに伝わるといいなと思って。10年くらい前から毎年そういった授業提案をしてきています」

谷「今年先生になったばかりの若い先生方ですよね。今、そういう先生方が結構な確率ですぐにお辞めになってしまうんですよ。ただ、やっぱりそういった新しく小学校、中学校、高校の現場に来られた方にお話ししたいのは、先生というのは本当に素敵な仕事だということ。今申し上げたように一生懸命やればやるほど、5年、または10年くらい一生懸命やってから後が本当に楽しくなってくるので。楽しさが本当にわかるようになるまでにはちょっぴり時間がかかるよ、と。今ちょっと大変だと思うけど諦めないで、せっかく就いた素晴らしい仕事を努力して続けてほしいなと。もし本当につらくなったら僕たちTOSSのサークルが近くにありますから。ぜひ来ていただいて、苦しいですと言ってくれれば悩みを共有していける仲間がいますので頑張ってほしいなと思います」
小山「いいですね、TOSSがあると安心しますね。なかなか相談しにくいでしょうからね、先生は。同じ仲間がいるといいですよね」
宇賀「この番組はお手紙をテーマにお送りしているのですが、谷さんにとって手紙が書きたくなる場所は?」

宇賀「今日は谷さんに、『今、想いを伝えたい方』に宛てたお手紙を書いてきていただいたのですが、どなたに宛てたお手紙ですか?」
谷「今日は全国の小学生の皆さんに書きました」

宇賀「最後に、これからの時代に必要な子どもたちの力ってなんだと思いますか?」
谷「問いを作る力でしょうね。今、生成AIが何かを教えてくれたり、ネット検索でいろいろな情報をすぐに取り出したりすることができるため、先生の役割も違ってくるのではないかと言われていますが、そういった中でも一貫して需要なのは、生成AIにどんな問いを出せばいいのか、何か情報を見た時にどんなことに引っ掛かることができるのかということですね。子どもがちょっとだけ問いを出した、ちょっとだけ面白い発言をしたというところに先生も引っ掛かってくれて、その発言を見取ってくれて、引っ張っていってくれる。そういうような授業が今後もっともっと求められてくるんだろうなと思いますね」


【〒102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST 谷和樹さん宛】にお願いします。応募期間は1ヶ月とさせていただきます」
谷和樹さん オフィシャルウェブサイト
TOSS 公式ウェブサイト
谷和樹さん、ありがとうございました!

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皆さんからのお手紙、お待ちしています

引き続き、皆さんからのお手紙、お待ちしています。日常のささやかな出来事、薫堂さんと宇賀さんに伝えたいこと、大切にしたい人や場所のことなど、何でもOKです。宛先は、【郵便番号102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST】までお願いします。
今週の後クレ

笠郷郵便局のみなさん
今回のメッセージは、岐阜県〈笠郷郵便局〉大矢 京香さんでした!
「数年前、養老町の一日警察署長に任命していただきました。警察署長の制服を着させていただいて、重みを感じながら、一日警察署長の役割を担わせていただきました。後日、新聞記事や地方のテレビにも取り上げていただけたので、お客さまが新聞を持ってきて、『これあなた?』と聞いてくださり、それ以来、しばしばお声がけいただけるようになったことがすごく嬉しかったです。一日警察署長がきっかけで、より地域に近い存在になれたのかなと思うので、今後も地域の方に寄り添った対応を心がけ、今後も地域の方にとって、身近な存在であり続けたいと思いました。」
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